ひと昔から長寿化により高齢者人口割合の増加が続いています。このため、複数の持病を抱えた高齢者が増えてきて医療機関で発行される処方箋の枚数増加実態がマスコミで報じられています。また、国民皆保険制度の下、処方箋が増えても少ない自己負担で手に入れられるわけですから患者は診察受診後には薬を受け取りにせっせと薬局へ出向くはずです。
一方、薬局では医師の発行する処方箋に基づいてせっせと調剤に励み、来客した患者に薬を手渡すわけです。患者と薬局が医師を間にしてこのような薬のやり取りを昔から続けてきました。その結果、複数の医療機関にかかる患者が増えてきて処方薬が増えてくると夫々の指示された服薬方法を間違えて余らしたり、廃棄してしまう実態も報じられています。
患者の中には市販薬を服用しているケースもあり、何種類もの処方薬をもらうと飲み合わせの起こることがあるようです。そこで、平成28年にかかりつけ薬剤師という新しい職能を設けて一人の患者が薬を沢山処方してもらっても一元管理できるように改めたわけです。
患者からの依頼があればかかりつけ薬剤師の方から患者の自宅を訪問して服薬に関する相談に応じたり、薬局が開いていない時間帯でも対応する体制を整えたはずでした。複数の処方箋で発行される各々の薬を専任の担当者が管理すれば飲み合わせによる副作用や無駄な処方を防げる効果が期待されたからでしょう。
ところが、5年ほど経過しても期待したほどの効果が見えてこなかったため、今年8月には更にかかりつけ薬局の認定制度が始まりました。認定薬局では複数の持病を持つ患者の服薬情報を一元管理して、処方箋を発行する医療機関と連携していく方針のようです。
この認定制度が機能すれば薬の飲み合わせ防止や減薬などの効果につながることが期待されています。
この制度が機能を発揮するためにもかかりつけ薬剤師の一層のスキルアップやコミュニケーション能力が求められています。高齢患者の増えている社会では特に、コミュニケーション能力は複数の病を抱えている高齢の患者との会話で伝えるべき内容がうまく患者に理解されるか、注目点になっています。
この会話は健康を維持している大人との会話と違って理解してもらう必要のある内容を一通り話して終わりになるわけでありません。気力や体力の低下した患者の気持ちにしっかり寄り添って話す必要があるわけです。このため、患者から信頼感を持って相談されるようになるには薬に関することだけでなく、体調管理や体の機能など、健康管理面でも幅広い知識をもっている必要がありそうです。
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