医療、介護関係の制度見直しと合わせて人材増強を図るため2006年度に大学の薬学部を6年制に切り替えました。これは本格的な高齢化社会になれば在宅医療に力点を置く医療を進めるには当時から現場実習体験を積んだ薬剤に関わる専門家の参画が必要不可欠になると考えられる事情があったようです。
高齢者が年々増加していく社会では医療機関や介護施設の世話になる人の増加はやむを得ないとみられています。このため、医療、介護関係では業務の主な対象が患者などですから作業を自動化したり省力化することが簡単でありません。
自ずと医師や看護師、薬剤師などの業務の増加が避けられないことになります。社会の人口構造の推移は大体予測できることであり、以前からこの高齢化による医療、介護関係の深刻な人手不足が予想されていて、2025年問題として課題となっていたわけです。
そこで、団塊世代と呼ばれる約770万人全員が4年後には後期高齢者となることが分かっていたので、国は医療、介護関係の制度見直しと合わせて人材増強を図ってきました。この制度見直しでは近年、医療業務に関係する専門家のチームが連携して行う必要のある在宅医療に力を入れる業務がポイントになっています。
しかも、そのためにはこの専門家チームに医薬品の専門家を加えて患者宅を巡回することが不可欠だとみられています。この点で薬局における調剤業務主体の従来型業務に従事している薬剤師のスキルをみるとそれだけでは対応しきれないと考えられるようになったわけです。
言い換えると、薬剤に関わる専門家が医薬品全体を取り扱う専門家といえる立場でチームに加わるには医療現場で実践的な体験をもっと積んでから薬学部を卒業した方が良いということになったようです。こうした経緯があって2006年度から大学の薬学部では現場の教育実習課程に力を入れるため6年制を取り入れたわけです。
新たな6年間のカリキュラムを履修した者のみが国家試験を受験できて、合格した者に国家資格が与えられることに改められました。
医薬分業が本格化し始めて以降、薬局やドラッグストアの増加に伴う調剤関係の求人募集が急増しました。そこで、薬学系学部の受験人気の高まりを背景にして国公立及び私立の薬科大学や薬学系学部の新増設が重なり、薬学を志願する学生募集数が急増したわけです。
募集数が急増したので薬学系学部の偏差値にも大きな差が出ていることもやむを得ないことと捉えられています。このため、薬学系学部への入学が楽になった半面、卒業後の国家試験合格率も大学ごとに大きく差の出ているのが現状です。
従って、薬学系学部へ入学できたといっても国家資格の取得が楽になったとはとても言えないわけです。しかも、学生生活が2年間長くなったわけですから、大学に支払う授業料や生活費、あるいは下宿の賃貸料など、家庭の費用が余計に必要になっています。