20年ほど前から大学などに薬学部の新設が相次いで、薬学を専攻する学生が急速に増加しました。近年は毎年、1万人程度の薬学部卒業生が輩出されています。これは国の院外処方処理方針の推進に対応して医療機関の周辺に調剤薬局やドラッグストアが増加するとの予想を見越して全国の大学などに薬学部が新設されたということです。
院外処方方針の推進に対応して近年、急増する調剤薬局やドラッグストアが国家資格を取得した薬学部卒業生の求人に走ったので大学入試で薬学系学部の人気が一時高くなりました。しかしながら、全国で薬局などの店舗数がほぼ飽和状態に近づいてきたため、卒業生の引っ張りだこ状態が終わったといわれています。
これからの薬学部卒業生は国家資格を取れば就職口がすぐに見つかる雇用環境ではなくなってきたということでしょう。また一方で、既に薬局に勤務している薬剤師といえども安閑としていられなくなってきたとみられています。
薬学部が2004年から6年制へ移行し、医療薬学がカリキュラムに加えられ、新たな学問領域まで学んだ学生が社会へ輩出されだしているからです。
医療分野まで幅広い知識を持った若い薬剤師が社会に増えてくれば現役の能力を超える可能性を持っているとみられるでしょう。高齢者が年々増加する社会では薬局などで客層への応対に際して従来から行われてきた外来調剤や服薬指導に加えて医療機関と客層との繋ぎ手としての役割の必要性が高まってきたようです。
高齢化が進んできて数年前から国が力を入れている在宅型の医療、介護システムが全国に広がっていて地域包括支援センターの存在感が高まってきました。長生きする高齢者が増えてくれば食生活と共に健康維持が高齢者の関心事として大きな位置を占めてくるわけです。
しかも、平均寿命が男女共に80歳を超えているわけですから健康寿命を伸ばしたくても無病息災というわけにはいかない高齢者が益々多くなるでしょう。
服薬しながら健康寿命を少しでも伸ばそうとする高齢者は増える一方です。こうして、数か所の医療機関に罹っている高齢者が益々、珍しくなくなるでしょう。そうなれば、多くの薬を飲み合わせる高齢者が薬局に続々と来るか、逆に薬局が薬を住まいへ届けることになるはずです。
そこで、高齢者と薬局などとの距離感が一段に縮まると考えられています。従って、何らかの病気にかかって医師から薬の処方箋が出されると調剤薬局で薬を処方してもらう高齢者にとって薬局などが格好のコミュニケーションする場になるでしょう。
薬剤師が高齢者毎にお薬手帳を基にして医療まで含めて健康管理についてコミュニケーションし、信頼を勝ち取ることができればキャリアアップにつながります。薬局などが飽和状態になっても他の薬局から一目置かれた存在として地域の人たちから信頼されることになるはずです。